概要

Webマーケティング・顧客分析のLTV(Lifetime Value/ライフタイムバリュー/顧客生涯価値)は、顧客との関係を通じて、1人の顧客から得る価値を表す指標です。Shopifyはその価値を売上型と粗利型に分けて説明しており、金額を読むときは何を価値として数えたかを確認します。[1]

CLV(Customer Lifetime Value)とも呼ばれます。初回購入1回だけでなく、その後の購入・継続も含めて顧客との関係を捉える考え方で、ShopifyもCLVの計算に平均購入額、購入頻度、顧客関係の期間を使っています。[2]

LTVを計算する考え方

計算方法は、事業の形と、売上・粗利のどちらを見たいかによって変わります。Shopifyも複数の式を紹介しており、すべての業種に共通する唯一の算式と考えず、使う値と期間をそろえます。[1]

売上ベースの計算例

売上を見積もる簡易的な方法は、「平均購入単価 × 一定期間の購入頻度 × 継続期間」です。購入頻度が年あたりなら継続期間も年でそろえ、月あたりの頻度なら月でそろえます。[1][2]

仮に、1回の平均購入額が4,000円、年3回購入し、平均4年継続する顧客層なら、「4,000円 × 3回/年 × 4年 = 4万8,000円」です。これは1人あたりの累計売上を見積もった金額で、利益ではありません。

ECサイトの分析では、購入が途切れた時点をどのように決めるかも必要です。契約終了が明確な定期サービスと、次回購入の時期が人によって違う物販では、顧客関係の期間を同じ方法で決められるとは限りません。[2]

粗利ベース・サブスク型の考え方

粗利を基準にするなら、売上ベースの見積もりに粗利率を掛ける方法があります。Shopifyは、平均購入単価・粗利率・購入頻度・継続期間を使う式を紹介していますが、この段階で獲得費や顧客維持費まで控除したとは限りません。[1]

先ほどの売上4万8,000円に粗利率40%を仮定すると、累計粗利は「4万8,000円 × 40% = 1万9,200円」です。この例では、さらに広告費やサポート費用などを考慮してから、獲得に使える費用を判断します。

サブスクリプションには、「1人あたりの平均月次売上 ÷ 月次の顧客解約率」という簡易的な売上推計もあります。StripeはBillingの分析で、ユーザーあたりの平均収益(ARPU)を登録者の解約率で割り、顧客生涯価値を推定する方法を説明しています。[3]

たとえば平均月次売上が2,000円、月次の顧客解約率が5%なら、「2,000円 ÷ 0.05 = 4万円」です。これは今後も平均月次売上と解約率が一定と仮定し、時間による割引を入れない、単純化した見積もりです。

この推計では、月次売上に年次解約率を組み合わせたり、顧客数の解約率を売上の減少率へ置き換えたりしません。解約率が0%なら式は計算できず、観測期間中に解約がなかったことから無限の価値を保証することもできません。

LTVは何の判断に使うのか

顧客の獲得と維持に、どのように費用や手間を配分するかを考える材料になります。ShopifyもCLVを、顧客獲得コストの検討や既存顧客の維持、顧客層に応じた取り組みに使う考え方を紹介しています。[2]

D2Cや定期購入などで継続購入を見込む場合も、初回の売上だけで判断しないという使い方が考えられます。ただし、将来の価値を見込めても今すぐ現金を受け取れるとは限らないため、費用の回収時期も別に確認します。

LTVとCAC・CPA・ROASの違い

顧客との長期的な関係を見る指標と、獲得費用や広告の効率を見る指標では、対象と時間軸が異なります。比較する前に、1人あたり・1件あたり・比率のどれかをそろえて読みます。

指標

見ている対象

比較時の要点

LTV

顧客1人との関係を通じた売上・粗利などの価値[1]

どの期間・顧客層・価値の基準かを決める

CAC

新規顧客1人を獲得する費用[4]

Salesforceは広告費、営業費、人件費などを含む指標として説明[4]

CPA

定義したコンバージョン1件の費用[5]

問い合わせ1件の費用を、新規顧客1人の獲得費用と同一視しない

ROAS

広告費に対する売上・コンバージョン価値の比率[6]

広告に帰属する価値の範囲と期間を確認する

**売上ベースの価値からCACを引いただけでは、利益になりません。**商品原価や維持費などが残るためです。粗利ベースを使う場合も、すでに控除した費用をもう一度引かないよう、費用の範囲を明記します。

LTVを高める基本的な取り組み

基本的な考え方は、購入単価、購入頻度、関係の継続という要素を見直すことです。Shopifyはこれらを向上の軸として説明していますが、どこに課題があるかを確認してから施策を考えます。[1]

  • 継続を支える:商品・サービスの満足度や購入後の案内を確認し、使い続けにくい理由を減らします。
  • 次の購入を支える:必要なタイミングで補充や関連商品の情報を届けるなど、再購入の理由を整えます。
  • 1回の価値を高める:顧客の用途に合った組み合わせやプランを案内し、無理な購入を勧めずに検討を支えます。

施策は金額を増やすことだけで評価せず、粗利や顧客対応の負担も合わせて確認します。Shopifyなどで集めた購入履歴を使う場合も、何を改善するための分析かを先に決めると、数字と行動を結び付けやすくなります。

算出・比較時の注意点

比較するには、顧客の範囲、観測期間、価値と費用の定義をそろえる必要があります。過去の実績を集計した金額と、将来まで推定した金額も分けて扱います。

  • 顧客層をそろえる:新規獲得時期や商品が違う集団を、条件を確認せずに同じ平均で比較しないようにします。
  • 観測期間をそろえる:購入から半年の顧客と、数年間利用した顧客の累計額はそのまま比較しません。
  • 売上型・粗利型を明示する:同じ金額でも、原価や維持費をどこまで反映したかを確認します。
  • 解約の定義と期間を確認する:顧客数の解約率か、売上の減少率か、月次か年次かを区別します。
  • 平均と予測の限界を見る:一部の高額購入者に左右されていないか、将来の購入や継続を過大に見込んでいないかを確認します。

獲得時点のCVRが高くても、その後の継続や利益まで同じように良いとは限りません。単一の数値で評価を完結させず、どの顧客から、どの期間に、どんな価値を得る見積もりかを説明できることが大切です。

  • Supervisor
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    桑田 陽介

    代表取締役

    Web制作・運用・改善に20年以上携わり、WordPress、CMS構築、SEO、AWSなど、Webサイトの企画・制作から公開後の運用まで幅広く担当。実務経験にもとづき、本記事の内容・表現・技術情報を監修しています。

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